青空も山も転がす芋の露    玉田 春陽子

青空も山も転がす芋の露    玉田 春陽子 『合評会から』(酔吟会) 睦子 露の玉に映る秋の景色が超広角レンズのように見えて、玉は揺らめき・・「転がす」が上手いです。 水馬 露に映った空も山も、芋の葉がそよげば揺れ動くという景。 可升 一読、蛇笏句「芋の露連山影を正しうす」を想起しました。この句の露は、山のみならず青空も映して、しかも玉となって風に揺れ、転がっている。蛇笏句とは異なるユニークさがあると思いました。 冷峰 芋の葉についた一滴に雲や山まで写っている。大きな句ですね。           *       *       *  作者によると自宅近くの都立町田高校の傍に里芋畑を発見、散歩がてら朝露を見に出かけた。「空はしっかり映り込んでいましたが、残念ながら山は映ってませんでした。そこはそれ俳句の世界ということで・・」と言う。  蕉門十哲の一人宝井其角が「切られたるゆめはまことかのみのあと」という句を詠んだ。向井去来が半ば呆れ半ば感心して、師の芭蕉に「其角という男はほんとに作者(こしらえ事の巧者)ですね、ノミに喰われたくらいのことを誰がこうも大げさに言いますかね」と言ったら、芭蕉は「そうだねえ、さしづめ現代版藤原定家卿とでも言ったらいいかもね。一寸したことを大きくふくらますのが上手いね」と答えたという逸話がある。春陽子今や其角の域に迫るか。 (水 20.10.13.)

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