露けしや命日を足す住所録 星川 水兎
露けしや命日を足す住所録 星川 水兎
『合評会から』(酔吟会)
木葉 年賀状準備の季節も近づき住所録整理。亡くなった人の命日を書き入れる。「露けし」の季節にピッタリの一句だと感じます。
三薬 住所録の故人に線を引くのはよくある事だが、命日を書き込むとは。きめ細かな人間関係を大事にしてる人ですね。
静舟 亡くなると住所録から削除するのは普通だが、命日を足すという発想に感激しました。
鷹洋 一人また一人と去ってゆく昨今の気持を的確に表現してます。
而云 亡くなった人はこれからも住所録に存在する。
春陽子 歳をとり知人の命日を記す度につくずく寂しさを感じます。
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ちょっと気になる点があって採れなかった。親兄弟の命日は記憶し、カレンダーに記入したりするが、果たして友人、知人、同僚などの命日を住所録に書き足すだろうか、という疑問だ。ただ作者の弁を聞いて考えが変わった。
亡くなった人をスマホの住所録から削除するに忍びず、カレンダー機能に命日を入れて、毎年リマインダーしてもらっているのだという。紙の住所録しか念頭にない筆者には思いも付かない方法だ。三薬さんの言うとおり、人事の機微を絶妙に捉えている、きめ細やかな気持の持ち主だったのだ。
(双 20.10.08.)