テレワークかすむ眼に居待月 久保田 操
テレワークかすむ眼に居待月 久保田 操
『この一句』
これは令和2年の居待月の句の決定版ではないか。新型コロナウイルス感染防止には「多人数が狭い空間に集まることを止める」のが最も有効な対策ということになって、官公庁も企業も就業者に「在宅勤務」を命じた。
メールをはじめ様々なネット環境を利用して、出社しないで互いに連絡を取り合い業務を進めていくのが「テレワーク」。年末の新語大賞を待つまでもなく、否応なしに定着してしまった新語である。
在宅勤務でパソコンとカメラの前では神妙な顔を取り繕っている。ネクタイを締めるまではいかないが、髪形を整え、ちゃんとしたシャツを着て畏まっている。しかし、下半身はステテコ一丁だったり、それなりの手抜き勤務ではある。
とは言え、朝から晩までパソコンに向かっていると、目がしょぼしょぼ、肩が凝ってくる。会社のデスクに座っていれば、部長課長の様子や顔色でその日の雰囲気が分かる。同僚の動きもつぶさに分かる。しかし、在宅でのテレワークとなると、その「空気」がつかめない。いつ何時重要なメールが飛び込んで来るかも分からない。出社して平常勤務に就いていた時の方がよっぽど楽だ、などとぼやきながら、眼頭を押さえ、肩を揉んでいる。ゆるゆると上ってきた居待月が「ご苦労さん」と慰めてくれるようだ。
今日、10月4日夜の月が居待月だが、あいにく東京地方は雲が厚い。夜遅く晴れ間がのぞいてくれると良いが。
(水 20.10.04.)