蛇穴に入らんとすればビル工事 今泉 而云
蛇穴に入らんとすればビル工事 今泉 而云
『合評会から』(酔吟会)
双歩 蛇はおちおち冬眠もできないですね。騒音で昼寝を邪魔されるのも似たようなもんです。
百子 潜ろうと思ったねぐらは、工事中ですか。行き場のなくなった蛇はどうする?
光迷 家を取られて、蛇は困ってしまいましたね。その後、どうしたんでしょう。新しい安眠の場所は見付かったのでしょうか。
* * *
この句を採った三人は、ねぐらを奪われた蛇の顔を想像しておかしみを感じ、冬眠する場所は見付かったのかどうか、ちょっと心配してもいる。困惑顔に俳諧らしい俳味を感じ、同時に哀感を覚えたわけである。
ビル工事は、この蛇にとって大きな災難だったが、今年もゲリラ豪雨などで家を失った人が多かった。今後の台風も心配だが、昨年の長野や千葉などの鉄橋や道路、家屋などが損傷から回復していないことにも心が痛む。
それにしても、東京五輪では暑さを避けるためマラソンなどが涼しい所でなされるのだとか。海沿いに屏風のようなビルを林立させ、道路をコンクリートで塗り固めれば、灼熱都市が誕生するのは分かり切ったことなのに…。
(光 20.10.01.)