海風の抜ける道なり青蜜柑 須藤 光迷
海風の抜ける道なり青蜜柑 須藤 光迷
『合評会から』(番町喜楽会)
てる夫 なんと爽やかな句なんでしょう。「青蜜柑」が特にいいですね。
水牛 いいですねぇ。海風が吹き抜けてくるんでしょうね。ミカン畑はだいたい海から山に向かって登りになっている。そこを「青蜜柑」の香りですからね、爽やかさが伝わってくる。
満智 風と蜜柑の組み合わせがとても爽やかで頂きました。海と蜜柑の香りを感じます。
水馬 海を見下ろす段々畑の蜜柑園がイメージできます。和歌山のあたりとか四国・九州とか。
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ミカンの生産量はピーク時から大きく減ったとはいえ、今でも70万トンを超え、リンゴとともに日本の果物の両横綱だ。江戸時代に鹿児島で栽培が始まったミカンは、九州、四国、紀伊半島と産地を広げ、関東にまで及んでいる。日当たりと水はけのよい土地を好むため、山や半島の斜面で栽培されることが多い。
掲句も海に向かって開けたミカン畑を詠む。皆さんの選評にあるように、海風と青蜜柑のイメージが重なり合い、爽やかさを増幅している。さらに「抜ける道なり」という断定調の表現から、海風の道に寄せる作者の深い愛着が感じられる。作者の弁によれば、句会の吟行で行ったことのある神奈川県二宮町のミカン畑という。二宮から熱海にかけては斜面にミカン畑が広がり、東海道線の車窓からも望める。今まさに青蜜柑の季節。場所を知って再読すると、趣が一段と深まる。
(迷 20.09.17.)