寝そびれて開け放つ窓夜這星   横井 定利

寝そびれて開け放つ窓夜這星   横井 定利 『この一句』  流星というものは出ないか出ないかと夜空を見回していても一向に現れない。それがたまたま雨戸を閉めようかと夜空を見上げた時にふっと見えたりする。そんな感じをよく伝えてくれる句である。  「寝そびれる」は「寝はぐれる」とも言うが、何か気になることや興奮することがあって、あれこれ物思いに耽ったりしているうちに目が冴えてしまい、眠ろうとしても眠れなくなってしまうことである。年をとるにつれて寝そびれることが多くなる。  そうなったらしょうがない。この作者のように思い切って起き出して、夜空を眺めながらぼんやりするのも一法だ。秘蔵のコニャックなどをちびりちびりやるのもいい。ビールや水割りなど、アルコール度数の低い酒はいけない。ついつい飲み過ぎてしまうからだ。そうすると再度眠りについた途端、今度は尿意によって目を覚まし、何のための寝酒だか分からなくなる。  ブランデーグラスをゆっくり回しながら、香りを楽しみ、来し方をあれこれ思い出す。こうなると、寝そびれたのも悪くない。窓を斜めに流れ星がスーッと過ぎる。「もうさしたる願い事も無いなあ」なんて呟いているうちに眠気が湧いてくる。(水)

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