閉店の貼紙千切れ秋の雷 向井 ゆり
閉店の貼紙千切れ秋の雷 向井 ゆり
『合評会から』(日経俳句会)
実千代 閉店の寂しさが何倍にもなって伝わってきました。
昌魚 閉店後どれほど経つのでしょうか?貼紙が千切れ、雷とは、寂しいですね。
弥生 「秋の雷」が閉店風景をより印象的にしている。
鷹洋 老舗も生き残れない厳しい現実。雷雨に千切れる、は付き過ぎの感もありますが。
雅史 コロナ禍で苦境に追い込まれた店主の無念さが伝わってきます。
水馬 コロナでつぶれるお店が増えてますね。タイミングが素晴らしい句。
明生 なんとももの哀しいが、それが「現実」なのだと思います。
ヲブラダ ラーメン屋さんの閉店の貼紙に、「リーマンショックも消費増税も乗り切ってきましたが、コロナには負けました」と書いてありました。
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「閉店」の二文字にはドラマがあるので、店仕舞いや貼紙の句は時折見かける。店を閉める理由は、リーマンショックなどの景気悪化や後継者不足など様々だ。掲句には何も情報がないが、コロナに起因していることは今や誰もが抱く共通認識だ。水馬さんの言うとおり、投句のタイミングが良かったのだろう。共感票が二桁になった。
鷹洋さんの言うように雷は付き過ぎではないかと筆者も思ったが、作者によると実際にゲリラ雷雨に遭遇したのだという。フィクションを好まない作者ならではの「秋の雷」だ。
(双 20.09.13.)