雲乱れ赤く染まりし盆の月 高橋ヲブラダ
雲乱れ赤く染まりし盆の月 高橋ヲブラダ
『季のことば』
「盆の月」とは盂蘭盆会の満月を言うのだが、これは元より旧暦のお盆(旧7月13〜15日)である。しかし旧暦7月15日は毎年日取りが変わってしまう。令和2年は9月2日だった。折柄の台風9号は九州北部をかすめて朝鮮半島へ去ったが、その余波で関東も雲が多く、盆の月は切れ切れに顔をのぞかせる程度であった。この句は8月句会への投句で、当然のことながら、実際の盆の月の出る半月以上も前に作られたものだが、まるで見てきたかのように今年の盆の月を詠んでいるのが面白い。
今年の夏から初秋の天気は無茶苦茶であった。なんと梅雨が明けたのが8月1日(東京地方)である。その翌日から30℃、35℃を越える酷暑が続いた。それは未だに続いており、9月3日には新潟辺で40℃を越えた。一体、秋の涼風はいつ吹くんだとぼやいていたら、大型の台風9号、10号が熱風とともに押し寄せてきた。
それに覆い被さるように春先から続く「コロナ禍」である。お腹の具合が良くない首相は遂に任に堪えられず何もかも中途半端で下りてしまった。しかし一億二千万国民は下りようが無い。「これからどうなるの」と不安で霍乱を起こしそうである。お月様もちょっと不吉な赤っぽい色で雲間を見え隠れしている。
(水 20.09.06.)