露光る解体を待つ木馬たち 岡田 鷹洋
露光る解体を待つ木馬たち 岡田 鷹洋
『この一句』
一読し「木馬が解体される? どこの? どうして?」と考えた人がいたかもしれない。これは、今年の九月ならではの俳句、つまり時事句なのだ。この句を採った人は「一世紀の歴史に幕を閉じた『としまえん』でしょうか。露は子供たちの涙かなあ」(てる夫)、「先日閉園した遊園地のエルドラドのことでしょうか。惜別の気持ちを込めて」(ゆり)、「豊島園がまず浮かんできました。解体と露に、はかなさを感じます」(道子)というように、舞台も解釈もおおむね一致していた。
豊島園の回転木馬は、機械仕掛けの芸術的な乗り物として「機械遺産」に認定された、世界的にも貴重なもの。1907年にドイツで誕生し、第一次世界大戦を避ける狙いから1911年に米国に渡って半世紀以上活躍、1969年に来日し、71年から50年近く豊島園で子供たちを喜ばせ続けてきた。
「エルドラドの将来は未定」とされるが、美しく彩られた24体の木馬が子供たちを乗せ、元気よく走っている光景をまた見たい。そこには笑顔と歓声が渦巻いているはずだ。
(光 20.09.18.)