二百十日復旧未だ千曲川 堤 てる夫
二百十日復旧未だ千曲川 堤 てる夫
『季のことば』
「二百十日」は立春から数えて210日目のこと。今年は8月31日だった。台風シーズンと重なるこの時期は、ちょうど稲の開花期にあたり、台風の襲来は米の収穫を大きく左右する。そこで、二百十日と二百二十日は充分注意するようにと、江戸時代の天文暦学者、渋川春海が定めたという(詳しくは水牛歳時記参照)。一般的には災難に遭った日も厄日というが、俳句ではこの両日を別名「厄日」ともいう。いずれにしても、二百十日や二百二十日には災厄のイメージが内包されている。
掲句は、昨年秋の台風で被災した千曲川の復旧状況を詠んでいる。上田在住の作者はこれまで、「流木を中洲に残し冬千曲」や「鮎来るや千曲は重機工事中」など、台風の爪痕を季節毎に詠んでいる。来春の復旧を目指している上田電鉄別所線の通称「赤い鉄橋」の復旧工事の進捗具合は、特に気になるようだ。市民の足である別所線。千曲川に架かる鉄橋はシンボルでもある。何よりも自宅前を路線が走っているので、人ごとではいられない。
作者によると、別所線は来年二月末には全線開通する予定だという。それを聞いた俳句仲間は、開通祝いに押しかけようと目論んでいるとか。開通した時の投句も楽しみな定点観測の一句だ。
(双 20.09.30.)