父の忌は二八新蕎麦越の酒 前島 幻水
父の忌は二八新蕎麦越の酒 前島 幻水
『合評会から』(番町喜楽会)
青水 命日に集まってというよりは、一人で飲んでいる感じもします。詩情のある句です。
命水 息子さんの父親に対する感情がよく表れている句だと思います。
春陽子 兼題が「新蕎麦」なので、きっと酒と組合わせた句が出るのだろうと期待していました。そんな中で、この句の「二八新蕎麦越の酒」の調子の良さに惹かれました。
可升 最初、出来過ぎ、まとまり過ぎの句のような印象を持ちましたが、舌にのせてみると如何にも心地の良い句なのでいただきました。
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父親の命日に蕎麦屋でひとり静かに偲んでいる景が浮かぶ。ちょうど新蕎麦の出まわり時期で、とれたての味と香りを肴に、新潟あたりの辛口の酒を汲んでいる。しみじみとした心情を詠んでいるが、句の印象は明るい。「にはち・しんそば・こしのさけ」という畳みかけるようなリズムの良さが、新蕎麦の爽やかさと相まって心地よい。句会では新蕎麦の兼題句で最高点を得た。
作者によれば、父親は蕎麦と酒が好きで、「蕎麦は二八」が口癖だったという。酒はほとんど飲まないという作者だが、新蕎麦と酒をさらりと詠み込み、軽やかな追慕句となった。
(迷 20.08.23.)