寝ころんで独りに広き夏座敷 中村 迷哲
寝ころんで独りに広き夏座敷 中村 迷哲
『合評会から』(日経俳句会)
明生 伴侶を亡くされた方の句でしょうか。子供もみな巣立ってしまった。これからは、独りで生活しなければならない。それにはやや部屋が広すぎる。そんな寂しさを感じさせる句だと思いました。
水馬 連れ添いをなくされたのでしょうか。寝ころんで独りをしみじみ実感されたのでしょう。「広し」と切れを入れたほうが好きですが。
睦子 田舎の大座敷でしょうか、大の字になっても優雅な広さは贅沢だなあ。
二堂 座敷に寝転んだ子供の頃、座敷の広さが気になりました。そんなことを想い出させる句です。
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作者の自句自解によると、佐賀の実家の座敷を詠んだものだそうである。ご両親が他界され、今は無人の家にお盆で帰省し、寝ころんだところ、親族が賑やかに集っていた頃との落差を感じたというのである。
田舎の昔風の日本家屋の座敷は広くゆったりと出来ている。その真ん中に大の字になれば、吹き通る涼風とひんやりした疊が心地良い。するとたちまち、昔のことが走馬燈のように次から次へと現れて来る。
(水 20.08.06.)