万緑を真四角に伐り駐車場    今泉 而云

万緑を真四角に伐り駐車場    今泉 而云 『季のことば』  「万緑」という季語は俳句に親しむ人にとって、句作をそそる季語のひとつであると同時に実に難しい主題であると思う。目の前の景を詠めば事足るのだが、何百何千という類句がすでにある。あとはなにかに仮託して詠むか。これも万物の生命力を謳うにはなにか新奇性が欲しくなる。草田男の句の存在はあまりにも大きい。ポピュラー過ぎる季語でありながら、句会で大方を唸らせる句はそう多くないのが実状であるまいか。  この句は斬新である。樹木と草々の旺盛さを感じさせるのはもちろん、一転環境問題にも一言ありますと詠んでいるようだ。山間の最近脚光を浴び始めた観光スポットだろうか、車でやって来る観光客のために緑を根こそぎ伐り取って駐車場が出来たとみたい。緑一面の自然の中に人工物がポツンと。「こんなことをしないでもいいのに」と、メール選句の一人が慷慨していたが筆者も同意する気持ちがある。句評に戻って結べば、「真四角に伐り」ときっぱりとした措辞にそれが駐車場だというのが面白くもある。 (葉 20.08.05.)

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