自粛明けマスクの剣士夏稽古 荻野 雅史
自粛明けマスクの剣士夏稽古 荻野 雅史
『この一句』
コロナ緊急事態宣言が解除となり、稽古自粛が続いていた道場が再開された。待ちかねていた剣士たちが集まったが、感染防止のためマスクを付けての稽古となる。防具を付け、さらにマスク着用の夏稽古だが、掲句からは意外に暑苦しさを感じない。
句会でも「ようやく自粛明けとなり、颯爽と少年剣士が練習に向かう姿がわかる(二堂)」、「マスクをかけての稽古、異常な環境下で稽古に励む爽やかで颯爽とした姿が浮かぶ(操)」と、爽やかな剣士像をイメージした人が多く、高点を得た。
五七五の言葉がそれぞれに爽やかさにつながっている。「自粛明け」には数カ月に及ぶ我慢から解放された喜びがにじむ。「マスクの剣士」は白覆面の時代劇の主人公を連想させる。そして「夏稽古」からは明るい光の中、稽古に取り組むひたむきな姿が見える。
作者は「剣道の稽古が4か月ぶりに再開され、汗を流した喜びと清清しさを詠んだ」というが、事実を並べた素直な表現から、その気持ちがストレートに伝わる。ちなみに使ったマスクは剣道連盟推奨の、顎を締め付けない覆面タイプという。色は紺色で「竹刀を振る剣士たちは夜盗集団のようだった」という落ちが付いた。
(迷 20.07.29.)