クレヨンで描くそら豆日曜日 植村 博明
クレヨンで描くそら豆日曜日 植村 博明
『季のことば』
句を見た瞬間、「そうだ、ソラマメのあの色はクレヨンだ」と感じた。漢字で表せば「薄緑」になるのだろう。あの色調は非常に微妙で、水彩でも油絵具でもうまく描けそうにない。「クレヨンで」に惚れて「この句は絶対に選ぼう」と決めた後のこと。句のそら豆は皮つきなのか、皮をむいた中身なのかという、重大な問題に気付いた。
我が家に空豆はなさそうだ。例のようにネット情報に頼ると、皮つきと皮をむいた後の二様の写真を見ることが出来た。色の濃淡が明らかに違う。生と茹で上りでは、黄緑と薄緑という具合に色調が異なるらしい。さらにネット情報を読んで行くと、収穫の時期や茹で時間によっても、色が微妙に違ってくることが分かってきた。
そして、そら豆の一方の端についている唇型の部分がある。「おはぐろ」という、あの部分の色は、収穫の時期によって薄緑から茶色に変わっていくそうだ。腕を組み、考え込まざるを得ない。ふと「パステルがいいのかな」と考えた。するとネット写真のそら豆の「おはぐろ」が少し動き、微かな声が聞えてきた。「クレヨンだと思います」。
(恂 20.06.26.)