弧をなして水平線に夏来る 大沢 反平
弧をなして水平線に夏来る 大沢 反平
『合評会から』(日経俳句会)
昌魚 クルーズ船から見た大きな景を思い出します。
木葉 五月の晴れた海に夏の到来を見た句。「弧をなして」に工夫のあとを感じます。見渡す限りの水平線にどっと夏が押し寄せた感じを出しています。
弥生 空気が緩んでくると海は膨らんで見えます。「弧をなして」が効果的でスケール感あり。
ゆり 本当に夏らしい、読んで嬉しくなる句でした。
青水 千葉の銚子に小高い丘のような見晴らし台があって、登ると三六〇度、周囲が一望できる。三六〇度の海が迫ってくる。初夏の海が膨れ上がり、弧をなして迫って来るのだ。
* * *
選句表で見落とし、合評会の句評を聞いて刮目する句が時々ある。掲句を一読した時は「弧をなして」が掴み切れなかった。地球の弧に添う水平線と、輝き盛り上がって弧をなす夏の海が重層的に描かれ、この句を採った人たちは皆そこを読み取っている。作者によれば銚子の先の犬吠埼にある「地球が丸く見える丘」での光景という。同じ場所に立ったことがあるだけに、採れなかったのが口惜しい。
(迷 20.06.11.)