遊具みなテープで縛る子供の日  中村 迷哲

遊具みなテープで縛る子供の日  中村 迷哲 『合評会から』(番町喜楽会) 青水 今年の時事句としても記念碑的な一句。 命水 行き場がなくなって子供も自粛を強いられている。 白山 本当に子供は可愛そうです。 てる夫 コロナ禍の句の典型なので頂きました。 木葉 子どもの日なのに公園で遊べない。「テープで縛る」と、「縛る」が生活を拘束している現実を言い表して的確です。 可升 縛られた遊具だけをモノとして描写し、変に説明しないところがいい。 星川 テープでぐるぐる巻きにされた遊具は、物寂しい光景でした。      *     *     *  子供が遊んではいけない児童公園。誰も来くるなという観光地。事実は小説より奇なりというが、誰がこんな事態を想像し得ただろうか。新型コロナによる悲しい実態だ。とりわけ、子供たちには辛い仕打ちが続いた。2月末、安倍首相がいきなり全国の小中学校の臨時休校を要請して以降、子供たちの行き場がなくなった。もちろん部活は中止、図書館も閉館。動物園やテーマパークどころか、近くの公園すら行けなくなる始末。公園の遊具は使用禁止の看板とともに、ロープやテープでぐるぐる巻きにされてしまった。  掲句は、この悲劇を実に巧みな言葉遣いで詠んでいる。今年の「子供の日」の秀句として、いつまでも記憶に止めておきたい一句だ。 (双 20.05.29.)

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