散る桜スーパームーン観てますか 大平 睦子
散る桜スーパームーン観てますか 大平 睦子
『この一句』
下五の呼びかけ口調が効いている。そういえば、2007年の日経俳句会賞に輝いた深山陽子さんの「秋味のシチューですよとメール打つ」もメールでの呼びかけが新鮮だった。この句の場合は、散ってゆく花よ、ひときわ大きな満月を観ましたか?と問うているとの解釈が自然だろう。「散る桜」で大きく切れているとするとどうだろう。桜が散り始めましたね、今夜の明るいスーパームーンをあなたも観てますか?ロマンチックな展開になりそうだ。
月には神秘的な魅力がある。煌々と輝く月を眺めていると、何やら胸騒ぎを覚えたりもする。月光を浴びると狼に変身する男の話もある。地球との距離が最も近くなって、より大きく、より輝きを増すスーパームーン。今年は4月7日夜から8日にかけてで、天気にも恵まれ、各地で美しい満月が観測された。一方、この春の桜は暖冬異変でほとんど散ってしまい、葉桜になっていた。作者は、見たまま、ありのままを詠んだのではない。コロナ禍で見る人も少なく、寂しく散って行った桜を思い出し、「この月を観せたかったな」と、つい呼びかけたくなったのだろう。女性らしい優しさに満ちた素敵な一句だ。
(双 20.04.28.)