プラネタリウム出でて地球は春の雨 今泉而云
プラネタリウム出でて地球は春の雨 今泉而云
『この一句』
メール句会となった四月の番町喜楽会におけるダントツ最高点句である。
この句を詠んで栗木京子の短歌「観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生」を思い出した。「一日」は「ひとひ」、「一生」は「ひとよ」と読ませる。この歌があまりにも有名になり、観覧車と言えばこの歌が思い起こされ、歌人たちの間で、永らく観覧車の歌は詠まれなくなったという話も聞く。
掲句は、観覧車ではなくプラネタリウムであるが、この句も栗木京子の歌同様に、プラネタリウムといえばあの句、と少なくともわれわれのまわりでは長く語り継がれるようになるのではないかと思う。そういえば、観覧車とプラネタリウム、ともに詩歌の材料としては同じような立ち位置にある気がする。
プラネタリウムの中はまったくの異空間。そこから出て来ると雨が降っている。頭の中はまだ宇宙をさまよっているので、出てきた場所は東京ではなく地球である。ここに「地球」をもって来たことがこの句の最大の魅力。また季語「春の雨」との取合せが、なにかしら暖かくふんわりした気分を醸し出していて、カップルなのかもしれない。
(可 20.04.26.)