春の雲見飽きぬ空は動物園 竹居 照芳
春の雲見飽きぬ空は動物園 竹居 照芳
『合評会から』(三四郎句会・メール句会)
而云 雲の形や動きを詠んで、 鯨が行く、象が行く、という句は見たことがあるが、この句は「動物園」と大きく捉えて、独自性を発揮している。
久敬 春の雲の描く様子が動物園みたいというのは、スケールが大きく感動的です。
照芳(作者) 春の雲は動きが速く、いろいろな動物を連想させます。動物園に行かずとも楽しいものですよ。
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春の雲は「ぼんやりと霞んでいる」などと説明している歳時記もあるが、そうなのだろうか。私の頭に浮ぶ春の雲は綿のようふわふわと浮んで、少しずつ形を変えながら流れていく。そうでなければ春の雲じゃないよ、と言いたくなってくるほどなのだ。
だから句を見たとたん心の中で、「そうだよね」と相槌を打った。だれが何と言おうと、春の雲は空をゆっくりと流れていく動物たちなのだ。それをまとめて「動物園」とは。まさに我が意を得た句なのだが、後に「作者は現在、入院中です」という情報を聞いて、ハッとした。句は病室の窓から眺めた春の空、春の雲なのだ。後に「作者はそろそろ退院の頃」という情報もあって、少々安心した。
(恂 20.04.17.)