草はらに大の字地球暖かし 岩田 三代
草はらに大の字地球暖かし 岩田 三代
『この一句』
草原に大の字になって空を見上げる。これほど気持の良いことはない。地面が凍てつく冬は、とてもこんなことをする気にはなれない。草いきれのむっとする夏もあまり気分が良くない。やはりこれは春か秋の気分だ。
天高く馬肥ゆる秋の野原に寝っ転がって、爽やかな空気を吸い込むのも気持が良い。ただ秋はそこはかとない寂しさが漂う。そこへいくと仲春、晩春は「さあこれからだ」という、ふくらみのようなものを感じる。それがこの句にもある。即ち「地球暖かし」という大げさな表現だ。
「草はらに大の字」で切れ、「地球暖かし」と続く、句またがりの二句一章。これが大いに効果を発揮し、実に気持の良い句になっている。
この句は青春時代の思い出か、幼馴染みと連れ立ってのピクニックか。とにかく「思い出句」なのではなかろうか。令和二年春の新型コロナウイルス騒動の渦中では、到底こうした大らかな気分には浸れそうにない。うっかりすると、「具合の悪そうな人が倒れ込んでいます」と119番でもされかねない。
(水 20.04.12.)