木瓜咲くや蔵のしつくひ黄ばみたり 廣上正市
木瓜咲くや蔵のしつくひ黄ばみたり 廣上正市
『合評会から』(日経俳句会)
百子 古い田舎の家の隅には、木瓜の花がよく植えられています。木瓜の花は丈夫で何年もひっそりと咲いてますよね。歴史を感じます。
綾子 蔵のある古い町並みに、木瓜の花は合いそう。
三代 確かに蔵のある古い家の庭には木瓜がありそうだ。古い蔵と明るい木瓜の対比がいい。
水兎 白い花の宿命で、黄色から茶色に変化して花殻が落ちて行くように、権勢を誇った蔵も、静かに変化してして行く。春の憂いも感じる作品です。
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3月句会の「木瓜の花」の兼題句で最高点を得た句である。木瓜は平安時代に中国から渡来した帰化植物で、近代に入り庭木や鉢植えとして広く愛されてきた。春に朱色や白の小ぶりの花をつける。誰もが見たことがあり、なじみ深い花だ。漆喰が黄ばむほど古びた蔵も、読み手それぞれの郷愁を誘う。古い蔵と木瓜の花が、心象の風景で重なり合っている。
(迷 20.04.08.)