花ぐもり骨董店に上がりこみ    岡本 崇

花ぐもり骨董店に上がりこみ    岡本 崇 『この一句』  骨董とそしてまた俳句に興味を持つ一人として、句を見て「なるほどなぁ」と頷いた。これは実に花曇りの一日の雰囲気である。暖かくなっては来たが、スカッと晴れ渡っているわけではない。その何とも言いようのない花盛りの一日なのだ。家に籠ってテレビを見て過ごすような陽気ではない。ともかく桜でも眺めに行くか、と家を出る。  折からのコロナウィルスとの関係か、駅前から伸びる桜通りも人通りはまばらである。昨年、一昨年と比べてみると、浮き立つ思いは薄い。たまに覗く骨董店を覗いてみた。親父はいつにない愛想笑いを浮かべ、「ちょうどいいのが出まして」と座布団を勧める。出された江戸末期のぐい飲みを小机に載せ、しばらく眺めながら考えた。  この雰囲気、何となく花曇りに合っている。楽しくもあり、楽しくもなし。俳句の取合せは難しくもあり、簡単でもある。一時期流行った二物衝撃も、分かったようで、分からぬ面がある。花曇りと骨董店での時間つぶし。これも一つの取合せと思うのだが、この句を分かってくれそうなのは、彼と彼くらいのものかな・・・。作者はまた腕を組む。 (恂 20.04.03.)

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