八幡の隣は不動草の餅 徳永 木葉
八幡の隣は不動草の餅 徳永 木葉
『合評会から』(番町喜楽会)
双歩 草餅の置き所として相応しい題材ですね。
水牛 面白い。門前仲町の不動堂への道は「深川ご利益通り」なんて呼ばれて、縁日には大いに賑わいます。春には草餅屋も出ています。
水馬 富岡八幡の隣は深川不動。信心より食い気ということで、なんだか可笑しい。
* * *
筆者もこの句をとったが、票を投じた全員が、八幡は富岡八幡宮、不動は深川不動堂と断定しているのが面白い。関西の友人にこの句を見せたら、おそらく「これ、どこやろか。石切不動と石清水八幡はえらい離れとるしなあ」となるだろう。句会に、ほぼ同じような知見を持つ人々が集まることを前提にして、こういう句は成立している。
この句の最初の手柄は、ふたつの社寺が隣どうしであることを見つけて句に仕立てたこと。ふたつめは、それに季語の「草の餅」を取合せたこと。この取合せがなんともいえぬ俳味、面白さを感じさせる。くだんの関西の友人には「それで、どないしたんや。ちょっとも意味わかれへん」と突っ込まれそうだが。
(可 20.03.26.)