渡されし子に春の日の匂ふかな 今泉 而云
渡されし子に春の日の匂ふかな 今泉 而云
『合評会から』(番町喜楽会)
青水 豊かで幸せな家族の、春の日差しの中の一コマを切り取って、過不足ありません。孫句の一つでしょうが、季語の持つ豊かさが前面に出て、匂い立つ佳句になっています。
水馬 赤ん坊の気持ちのいい匂いがしてきそうな句ですね。季語が赤ん坊の柔らかな肌と体温の暖かさを表現していると思います。
可升 屋外で「ちょっと抱いてて」と渡された瞬間、「春の日」の匂いがしたように思えます。この瞬間の切り取り方が上手ですね。もちろん、子供が可愛いいから「匂ふ」のですね。
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一読し、思わず笑みがこぼれ「そうそう」とうなずかされる。赤ん坊かよちよち歩きを始めたばかりの幼児か、場面は公園か買物を終えて家に戻ったところか。託された子からふんわりと漂ってくる匂いを感じ取ったところに、春の麗かさばかりでなく、育ちゆくものへの優しい眼差しがひそんでいる。あたたかい家庭は大切だ。いかに小市民といわれようと、ガサツな政治問題などより、家庭を大切にしよう。
(光 20.03.13.)