塗椀に蛤汁のうすにごり     星川 水兎

塗椀に蛤汁のうすにごり     星川 水兎 『合評会から』(番町喜楽会) 春陽子 「うすにごり」の措辞が素晴らしいと思います。万太郎の「うすあかりも」素晴らしいが、この「うすにごり」は蛤汁の旨さを感じさせます。 てる夫 神楽坂あたり、ちょっと小粋な料理屋でしょうか。器に気を遣い、肴にうるさい調理人。椀汁は蛤の旨味たっぷり、「冷酒をもういっぱい」といきたいところ。 幻水 美しい漆椀でしょうね。蛤のすまし汁の美味さが想像されます。 可升 家庭で作る蛤汁はにごっています。「塗り椀」の色艶と、「うすにごり」の乳白色を対比させた視覚に訴える句ですが、背後から香りも立ってきます。にごりの旨味が美味しそうです。       *     *     *  多分、朱色の漆塗りのお椀の中に大粒の蛤がいくつか、という光景。「うすにごり」というのは視覚による表現だが、蛤汁の味覚、美味しさを感じさせる的確な言葉でもあり、舌なめずりしたくなる。お椀には木の芽か菜の花か、緑色の菜も顔を出していて、きれいな小世界をつくっている。雛祭りでしょうか、それとも喜寿などのお祝い事でしょうか。「えっ、昨日の夕ご飯?」 なんと贅沢な…。 (光 20.03.08.)

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