雛祭ふたりで祝う家となり 須藤 光迷
雛祭ふたりで祝う家となり 須藤 光迷
『季のことば』
雛祭は3月3日の桃の節句に、女児の健やかな成長を願って行われる行事。お雛様に桃の花を飾り、白酒や菱餅を供えてお祝いする。春の季語であり、歳時記には「桃の節供」や「内裏雛」、「雛あられ」など関連する季語が30以上並ぶ。
主役は雛飾りと女の子。女の子が生まれると初節句のお祝いにお雛様を買う家は多い。小さな内裏雛セットから豪華な段飾りまで多種多様なものが売られている。代々伝わる雛道具を出して祝う旧家もある。句に詠まれた家では、娘さんが嫁ぐか就職して夫婦だけとなり、残された二人がお雛様を飾って祝っている。子供がいなくなった淋しさと、育て終えた安ど感がにじむ。
芭蕉に「草の戸も住替る代ぞひなの家」という有名な句がある。初案の「住替る世や」を変えたと伝わる。時の流れ、世代交代を意識したものであろう。掲句も淋しさを詠んでいるだけではない。「ふたりで祝う家」とう言葉からは、子供の成長・独立を一家の世代交代ととらえ、二人だけの暮しをこれから大事にして行こうという思いも伝わってくる。
(迷 20.03.06.)