念願の墓仕舞終え花菫 田中 白山
念願の墓仕舞終え花菫 田中 白山
『おかめはちもく』
少子高齢化、核家族化が進んで、先祖代々の墓を守って行けない家が多くなった。ことに、都会住まいの地方出身者にとって、故郷の先祖代々の墓は重い負担になっている。自分がしゃんとしている間はいいが、子の時代になったらどうするのか、その先は・・と考えると、気が重くなってしまう。
墓仕舞には役所の「改葬許可証」を得る必要があり、そのためには墓地管理者である菩提寺の承認を得なければならない。寺にとって墓が一つ無くなるというのは、檀家を一つ失い収入減になるのでいい顔をしない。そこで檀家を辞めるための「離檀料」を納め、墓を撤去する「閉眼供養」なる法要を行い御布施を納める。さらに墓石の撤去費用、取り出した遺骨を都会の永代供養墓なり何なりに納める費用が要る。精神的、肉体的苦労に加え経済的負担も大きい。しかし、作者はこれを何とかしなければという一念でやり遂げ、心底ほっとしたのだ。
正直な気持の伝わる佳句だが、墓仕舞を「念願の」というのはいかがなものか。せめて「懸案の」くらいにしておくべきではないか。もう少し、気持を添えるとすれば、「墓仕舞終へて息吐く菫草」あたりはどうか。
(水 20.02.27.)