永き日や数独をとく船の上 池村 実千代
永き日や数独をとく船の上 池村 実千代
『この一句』
新型コロナウィルスの流行が世界を脅かしている最中、その渦中にあるクルーズ船から送られてきた一句だ。「いま話題のダイヤモンド・プリンセスに乗っています。句会には出席できません」と作者から筆者に驚きの一報があった。「元気にしてるのでご安心を」とも綴られていた。メール投句の取りまとめをしている筆者が折り返し「ぜひ投句を」と連絡すると、「歳時記も何もないけど頑張ります」と気丈な返信。掲句のほかに3句送ってきた。ただ、掲句からはクルーズ船であることは読み取れず、淡々とした詠み方なので、作者に断って「クルーズ船にて」の前書きをつけさせてもらった。句会では誰もが一様に驚き、句友の無事を念じて一票を投じた。前書きがなくても素晴らしい句と評判で、「天」に輝いた。
「数独難しくて悪戦苦闘しています。でも何かに集中するって大切ですね」、「不安のなか俳句をつくることで心が元気になり免疫力アップです」などなど、作者は気弱な素振りを微塵も見せなかったが、本心は先行きが見えず不安で一杯だっただろう。ともあれ、19日に真っ先に下船できたのが何よりだった。
(双 20.02.21.)