タラップを降りて離島の風光る  廣田 可升

タラップを降りて離島の風光る  廣田 可升 『季のことば』  「風光る」は明治以降によく詠まれるようになった季語で、水牛歳時記によれば「春になると日光が力を増し、ものみな輝いて見えるようになる。すべてがまばゆいような春の日に吹く風の様子」とされる。掲句は、おそらく観光で訪れたであろう離島で出会った春の風を詠む。  いきなり「タラップを降りて」と詠み出し、読者に場面と動きを提示する。タラップと言えば、船や飛行機を乗り降りする移動式の階段。離島と続けば、船も考えられるが、外に出た時に風を感じているので飛行機に違いない。  地方空港もジェット機の就航で近代化が進み、機体に横付けする形のタラップは小空港でしか見かけなくなっている。作者はプロペラ機に揺られてたどり着いた離島の空港で、タラップを降りた瞬間に春の光のきらめきと、爽やかな風を感じたのであろう。タラップの場面から、「離島の」と視線を広げ、季語の「風光る」につなげる。空港の周りに広がる海も見え、まばゆい春風が吹いてくる心地がする。五七五のリズムも良いが、視線の動きに応じた五三四五の破調で読んでも面白い。 (迷 20.02.17.)

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