煮え切らぬ男ぐつぐつおでん酒  嵐田 双歩

煮え切らぬ男ぐつぐつおでん酒  嵐田 双歩 『この一句』  この一句が目に入ったとき、最初はくすりとし、暫くして何とも切ない気になった。笑いを覚えたのは、屋台でも小料理屋でもいいが、決断できず、しきりに愚痴っている男の姿が目に浮かんだからだ。かなりの人間は身に覚えがあるだろうし、こういう同僚や部下に手を焼いた経験も思い返されるのではないか。  それが一転、切ない気分に変わったのは、この句が、友人の姿などではなく、社会時評では…と気付いたからだ。「煮え切らぬ」というのは、言を左右にして逃げ廻る無責任な、狡猾な擬態のことなのだ。例を挙げれば、慇懃無礼な答弁の官房長官であり、その同僚や上司、彼等がよく煮えたおでんで美酒を、という皮相な図なのである。  俳句の解釈は、読み手の自由である。ただ「ぐつぐつ」を「愚図愚図」に通じさせる言葉の使い方など、手練れの句であることは間違いない。世の中には、あちらを立てればこちらが立たず、の問題は多々ある。とはいえ、環境保全のための脱炭素化や世代間の不公平をなくす年金問題は、愚図愚図せず、すみやかに解決したいものだ。 (光 20.02.11.)

続きを読む