凧揚げて少年の夢老いの夢    今泉 而云

凧揚げて少年の夢老いの夢    今泉 而云 『この一句』  二月一日に開かれた番町喜楽会の初句会で、最高点を得た句である。春の風を受け大空を舞う凧に、自らの夢を重ねる少年と老人の姿を詠む。句は場面を語るのみで、二人の関係や夢の内容などは読者の想像に委ねている。 句会では孫と一緒の祖父をイメージした人が多かった。高く揚がった凧に孫の行く末を思い、幸多かれと祈る。あるいは老人が少年時代の夢を回想し、来し方を振り返っていると見た人もいた。凧に託して幼き夢と老成の夢を対比させたところに、それぞれの思いを重ねて共感したようだ。 凧揚げは昔は正月遊びの定番だったが、外で遊ぶ子供が減り、あまり見かけなくなった。ただ伝統の凧揚げ祭りを続けている地域は全国にあり、よく揚がる西洋凧の普及もあって、根強い人気がある。形を工夫して風を読み、大空を自在に泳がせる。凧揚げには男の子のロマンが詰まっている。作者によると自宅近くの広場で見かけた光景らしいが、意外にも凧を揚げていたのはお年寄りが大半だったとか。夢(ロマン)を失わない少年は、老人自身かも知れない。 (迷 20.02.09.)

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