風光る蘭医育てし城下町 徳永 木葉
風光る蘭医育てし城下町 徳永 木葉
『この一句』
これは幕末に順天堂を育んだ佐倉を詠んだ句である。この日の句会には、「勝安房の築きし台場風光る」、「風光る桂浜には龍馬像」など、「風光る」の兼題で幕末にちなんだ句が多く出た。そういえば人気の少女漫画『風光る』も、沖田総司に恋する男装の隊士を主人公にした新撰組の話である(らしい)。
どうも「風光る」には幕末が似合うようだ。そう思って季語の本意を改めて尋ねると、「万物生動する季節に吹く風」(「水牛歳時記」)とある。門閥に拠らず、さまざまな階層の人士が生動した幕末は、なるほど「風光る」にはもっとも相応しい時代であると納得する。
作者は北海道生まれながら、ながく佐倉に住んでおられる。そうだとは知らなくても、この句の「育てし」には、「城下町」の風土や歴史に対する愛着の深さが感じられる。佐倉城趾には国立歴史民俗博物館もあり、これからの季節、天気の良い日に空堀や天守閣跡を散策すれば、春風駘蕩をまちがいなく満喫できる場所である。かく言う筆者は隣町四街道の住人。佐倉は折にふれ訪れる、ことのほか好きな土地である。
(可 20.02.07.)