この店も木片人形春の色     堤 てる夫

この店も木片人形春の色     堤 てる夫 『この一句』  この句には前書が付いている。「農民美術百年展の上田で」と。だが、そう説明されても、大方の人は理解するのに苦労するに違いない。それは「木片(こっぱ)人形」がどういうものか分からないからだ。例えばこれが「博多人形」や「こけし人形」だったら、春光の中の人と店先の人形のイメージも湧いて来やすいだろう。  木片人形とは、木の切れ端に農民や子供の姿などを彫って彩色したもの。山本鼎というフランスに留学した画家が上田で創始し、全国に普及させた。その百周年美術展を上田市立美術館が2月下旬まで開催中で、市内の商店や飲食店など約40カ所にも木片人形が飾られている。掲句は、それ等を見ての感想である。  美術展には鹿児島や島根、伊豆大島の人形などが展示され、興味深かった。市内には恵比寿と大黒天の人形も。そうそう、陶器店ではスマートホンを手にした新作の人形が売られ、NHKの朝のドラマのモデルになったとされる陶芸家の作品も。ふと思った。写真と組み合わせた「カメラ句」なら、こんなに説明に苦労しないで済むかも、と。 (光 20.02.06.)

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