星冴ゆる一直線のハイウエイ 高石 昌魚
星冴ゆる一直線のハイウエイ 高石 昌魚
『季のことば』
「星冴ゆる」は「月冴ゆる」とともに、「冴ゆ」という真冬の季語の派生季語である。寒さがとことん進むと、身体がキーンと引き締まる。大気は澄んで、ものが鮮明に見えるようになり、音もよく透る感じになる。
この句は星が冴えざえと輝く夜、一直線に延びるハイウエイを走っているとストレートに詠んでいる。これが引き締まった「冴ゆる夜」の雰囲気を遺憾なく伝えている。
アメリカやカナダ、オーストラリアなどの大平原の星空が思い浮かぶ。あるいは北海道でもいい。疾走する車がまるで止まったような感じで、長い長いコンベアーに載せられて、そのまま星の夜空に吸い込まれていくのだ。気の遠くなるような景色である。
と、大陸の夜景ばかりを思い描いていたのだが、先日、とある用事で都内に出た帰り道、第三京浜を走る車の中からこの情景を見た。それはものの一〇数分ではあったが、星冴ゆる一直線のハイウエイだった。こんな広々とした星空が、こんな身近にもあったんだなあと妙に感心した。
(水 20.01.29.)