疊屋の旧字古びぬ初仕事 嵐田 双歩
疊屋の旧字古びぬ初仕事 嵐田 双歩
『季のことば』
新年1月4日に句会恒例の七福神巡り吟行を催した。今年は旧東海道に沿って品川宿近辺の7社寺を回った。掲句は青物横丁商店街にある畳屋を詠んだもの。江戸時代から240年続く老舗で、仙台藩の御用を務めていた由緒がある。店構えは古く、看板の「疊」の字も旧字で書かれている。
店内を覗くと松も明けぬうちから、七代目という店主が忙しげに立ち働いている。「初仕事」は「仕事始」と同類の季語で、新年に初めて仕事に取りかかることをいう。今年は暦の関係で役所や企業は6日が仕事始めとなったが、例年であれば三が日を終え、4日に仕事始めというところが大半だろう。
作者は畳屋の古びた外観と対照的に、4日から精力的に働く主人の姿に老舗を守り続けようとする意気込みを感じたのではないか。「旧字古びぬ」という巧みな言い回しが、そうした思いと初仕事の清新な緊張感を伝えている。
(迷 20.01.13.)