古都大路信号守る冬の鹿 谷川 水馬
古都大路信号守る冬の鹿 谷川 水馬
『おかめはちもく』
鹿が街と生活に溶け込んでいる奈良らしい光景である。鹿は人と車の動きをよく見ており、あたかも信号を守っているように交差点を横断する。奈良公園の周辺でよく見られるようで、ネットにも目撃談や動画がアップされている。
句会でも「実体験を上手に句にした」「鹿は団体行動をするので信号を守っているように見えるのだろうが、上手く詠んだ」と点を集めた。古来、神の使いとして保護されてきた鹿が、現代社会のルールである信号を守って共存しているところに面白みが感じられる。
ただ「鹿は秋の季語なので無理やり冬を付けた感じだ」、「古都大路に鹿とくれば、ややくどいので古都は不要では」との指摘があった。作者によれば実際に見たのは鹿の親子が交差点を渡っている光景で、本当はその親子を詠みたかったとのこと。
そこで出てきた改善案が「冬大路信号守る親子鹿」。子鹿を守り注意深く道路を横断する親鹿の姿が浮かんできて、さらに趣の深い句となった。句会の衆知を集め、作者も納得の添削ではなかろうか。
(迷 20.01.10.)