五色豆色それぞれの淑気かな 玉田春陽子
五色豆色それぞれの淑気かな 玉田春陽子
『季のことば』
「大旦」「御降」「喰積」「嫁が君」。いずれも新年の季語だが、俳句に縁がない人には何のことかチンプンカンプンだろう。読みと意味は、順に「おおあした(元日の朝のこと)」、「おさがり(三ヶ日に降る雨や雪)」、「くいつみ(今でいうお節料理)」、「よめがきみ(ネズミ)」。
他にも新年には難解季語がたくさんある。「淑気(しゅくき)」もそのひとつ。「新年の天地の間に漂うめでたい気配」で、字面からも何となく厳かな気分が伝わってきて、こんな難しい季語はどう詠めばよいのか。「水牛歳時記」をひもとくと、「適当な上五、中七に『淑気かな』と置けば何となく格好がつく」ようなことが紹介されていて、少し気が楽になった。
さて、掲句。京都の銘菓「五色豆」は誰しもご存知で、直ぐに形や食感が思い浮かぶ。白、青、赤、黄、黒の色それぞれに淑気が宿っていると言われれば、なるほどそうだと、つい一票。みんなもつられて高点句となった。デザイナーの作者には、小道具を巧みに配した洒落た句が多い。テーマを何にするか、アクセントをどこに置くかなどなど、きっと五七五全体を俯瞰してデザインしているのだろう。
(双 20.01.02.)