封筒に切手貼り足す冬の雲 大下 綾子
封筒に切手貼り足す冬の雲 大下 綾子
『この一句』
郵便料金は平成6年以降、はがき50円、封書(定型25g以下)80円という設定が20年もの長い間続いた。すっかりその料金に馴染んでいたが、消費税が8%になった平成26年に、はがき52円、封書(同)82円となってからは、はがきが62円になったり、この10月には消費税増税に伴い、それぞれ63円と84円になるなど目まぐるしく改訂した。
筆者の手元には、20年間値上げしなかった期間に買った50円、80円の記念切手がたくさん残っていて、貼り足すための10円や2円の切手もある。手数料を払えば新しい切手と取りかえられるものの面倒だ。先日、封筒にうっかり62円切手を貼ってしまった。84円にするためにさらに10円切手2枚と2円切手を貼り足したが、貼るスペースはなくなるわ、見た目は悪いわで少し凹んだ。
掲句は、このあたりの世知辛いというか情けない、しかし、切実な心情をうまく掬い取った素敵な時事句だ。この句に出会って間もなく、日本郵政グループ3人の社長辞任会見があった。3人が並ぶ姿を見ていたら、ぺたぺたと貼り足した切手を思い出した。
(双 19.12.30.)