行き止まるレールの錆びて山時雨  中村迷哲

行き止まるレールの錆びて山時雨  中村迷哲 『この一句』  これは、どこの光景なのだろうか。地方に行くと錆びたレールを見ることが多くなった。ひとつは利用者減少による廃線のため、もうひとつは地震や台風などによる被害のためである。東日本大震災による三陸鉄道が典型だが、復旧に何年も要し、ようやく全面開通したと思ったらまた被災し、というとても悲しい話もある。  廃線になったわけではないが、錆び付いた無用のレールとなれば、それこそ至る所に見受けられる。たとえば待避線、閉鎖された車両基地…。日本経済の全盛期をしのばせるものだ。それが時雨が降り頻る山間にあり、そこに桜や欅などの落葉が舞い散り、風に震え…などと想像すると、どうしようもない侘しさが募ってくる。  だが、それが日本の現実なのだろう。鉄道衰退の要因はクルマ社会の発展にあった。それが地球温暖化をもたらし、加速すると確認されても、クルマ依存はやみそうもない。アクセルとブレーキを踏み違えての事故が頻発したところで、自分には無縁と思う人が多いのだから。日本人の頭も錆びているのかもしれない。(光 19.12.18.)

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