ノーサイド背中湯気吐き息白し 池内 的中
ノーサイド背中湯気吐き息白し 池内 的中
『この一句』
令和元年はラグビー・ワールドカップで大変盛り上がった年である。サッカーに比べてはるかに地味なスポーツで、「にわかファン」も含めてこんなに盛り上がったのは驚くほかない。
若い頃、正月休みに帰省すると、かならず花園ラグビー場の社会人選手権を観に行った。実家でおせちの残りを詰めてもらい、魔法瓶に熱燗を入れ、花園のスタンドで一人で楽しんだ。前売券など買わずとも入れ、生駒山を見ながらのなんとものどかな観戦であった。近くでオールドファンたちが酒盛りをしていて、「あほ、なんでそこでノックオンするねん」などと叫んでいる。スタンドとフィールドの距離が近く、選手や審判の声が観客席まで聞こえてきた。
掲句は試合が終わった後の選手の姿をそのまま描写したものである。この日の季題は「息白し」。作者はそれだけでは物足りないと考え「背中湯気吐き」の措辞を置いたのだろう。これをうるさく感じて、「息白し」に絞った方がよいという指摘があった。しかし、この措辞があることで句の臨場感はぐんと増す。あの頃の花園のようだ。「ラグビーの年」の掉尾の句会を記念して一票を投じた。
(可 19.12.16.)