養老の古層浪漫や冬河原     和泉田 守

養老の古層浪漫や冬河原     和泉田 守 『この一句』  初冬に千葉県の〝秘境〟養老渓谷を訪ねた吟行句である。日本で一番遅い紅葉の名所として知られるが、近年は地磁気逆転の地層「チバニアン」で国際的にも有名になった。  チバニアン見学は吟行の目玉の一つ。一行16人で最寄り駅から向かったが、起伏のある道を30分歩き、さらに川までの急坂を下る難路で、地層にたどり着いたのは13人だった。ガイドさんの解説を聞きながら、77万年前の地磁気逆転を示す地層を眺め、それぞれに句想を練った。  作者は幼い頃から化石や地層が好きで、今回の見学を楽しみにしていたという。この秋の台風と大雨による増水で河原には倒木や流木が残り、土砂も堆積している。掲句は世界的にも珍しい地磁気逆転地層の発見を「古層浪漫」と詠む。眼前に広がる蕭条たる冬河原との対比から、作者の太古への熱い思いまで伝わってくる。 養老渓谷やチバニアンを知らなくても、古層浪漫と冬河原の言葉の響き合いが心に残り、吟行句を超えた普遍性を持っているように思う。 (迷 19.12.11.)

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