石蕗の花背に微笑めり路地仏   高石 昌魚

石蕗の花背に微笑めり路地仏   高石 昌魚 『季のことば』  ツワブキは真冬にもつやつやした緑葉をしっかりと開き、立ち上がった茎の先に、黄色い菊のような花をいくつも咲かせる。あたりに花が無くなった11月から1月にかけて、海岸や川に通じる道の辺や庭の隅、あるいはこの句のように路地に、静かに咲いているのが可憐である。生き残りの虻が、頑張れば春まで持ちこたえられるぞという感じで花芯に頭を突っ込み、蜜を吸っている。  花らしい花の無い冬場に、つややかな緑葉と黄色い頭状花を掲げた石蕗は、元気そのものなのだが、どういうわけか地味である。丁度同じ頃、花屋の店頭を賑わすポインセチアやシクラメンなどの自己主張とは正反対だ。そんな風情が路地の奥のお地蔵さんには似つかわしい。  「路地仏」というのは作者の造語なのだろうか。とてもいい感じだ。地蔵か道祖神か。わずかな空間に立つ石像の後ろから石蕗の花が微笑んでいる。石仏も微笑んでいる。古風な詠み方の句だが、読んでいるとやすらぎを覚える。 (水 19.12.01.)

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