小春日や紙の鼠に置く目鼻 須藤 光迷
小春日や紙の鼠に置く目鼻 須藤 光迷
『この一句』
小春日和の暖かい日差しがたっぷり入る部屋で、正月飾りの鼠を紙細工で作っているのであろう。来年の干支は子(鼠)。粘土などでリアルに作ると嫌がる人もいるが、紙細工なら柔らかみと可愛らしさが出る。何体か作って、最後に目と鼻をチョンチョンと描き入れて出来上がり。「置く」という措辞が絶妙で、手仕事の喜びと、来る年を穏やか迎える心持ちが伝わってくる。季語の持つ柔らかな雰囲気ともぴったり合っている。
作者は趣味の陶芸で個展を開くほどの腕前だが、紙細工もやっているという。実際に作ったのは紙を丸めて体を作り、目鼻を描いたものらしい。「折り紙で動物を作るのがブームになっている」とも話しており、年末に鼠づくりに精を出している人は結構いるのかも知れない。
「小春日や」と大きな景を見せてから、「紙の鼠に」と近景に移り、さらに「置く目鼻」と手元にクローズアップする詠み方も、職人芸を思わせる。
(迷 19.12.31.)