七五三シングルママの凛々しくて 田中 白山
七五三シングルママの凛々しくて 田中 白山
『この一句』
この一句を目にした時、ある女性の姿が浮かんだ。なぜ母一人子一人の家庭になったのか、その事情はつまびらかにしない。ただ、女の子が「医者になりたい」と進路を口にした時、編集者の母親は「うちには私立大学の医学部に進学させるだけの蓄えはない」ときっぱり答えた。子供はその言葉にうなずいたものの、あきらめず、夢を叶えた。
どうしたのか。お伽噺のように足長おじさんが出現したわけではない。自力で、夢を現にする道を探したのだ。入学金や授業料が不要なばかりか、月々、また期末の手当てが支給されるところ、防衛医科大学校を目指したのである。それは、今様に言えば凛々しい、古い言葉では逞しい母親と、その遺伝子を受け継いだ子供らしい挑戦だった。
最近、家族の形態も人々の生き方も多様化している。女性の社会進出は加速し、見た目ではなく、生き方が凛々しい女性が増えているのも確かだろう。ちなみに、この女の子は防衛医大を卒業し、結婚、出産をしたとか。となれば、早晩、七五三の時を迎える。それはともかく、男であれ女であれ、知恵を凝らし、力を尽くす姿は美しい。
(光 19.11.20.)