投げ上げる声も受け止め掛大根 玉田 春陽子
投げ上げる声も受け止め掛大根 玉田 春陽子
『季のことば』
掛大根(かけだいこん)とは、丸太で組んだ足場に、葉の部分を縛った大根を振り分けに掛けて天日干しするもの。10日ほどでしなびてきて沢庵漬けにされる。大根の産地の冬の風物詩であり、大根干す、干大根などと同類の季語である。
掲句は足場に大根を掛ける作業を描く。2段、3段に組まれた所では、大根を投げ上げる人と上で受け止める人が息を合わせないと上手くいかない。「投げ上げる声も受け止め」の上五中七から、「いくよ」「よしきた」といった声が聞こえ、大根の重みと収穫の喜びが伝わってくる。番町喜楽会の11月例会で最高点を得たが、連携作業を楽しむような句調から、おそらく夫婦であろう二人の仲の良さも読み取れる。
作者によると幼い頃に熊谷で見た原風景という。大根は重いので、下から投げ上げる方が大変だろうと思うが、作者の記憶では妻が投げ上げるケースがほとんどらしい。上州名物の空っ風は利根川を越え熊谷にも吹く。大根を乾かすとともに女房の強さも育むのかも知れない。
(迷 19.11.14.)