手に入れし牛乳瓶に野菊さす   鈴木 好夫

手に入れし牛乳瓶に野菊さす   鈴木 好夫 『おかめはちもく』  散歩の途中に野菊を見つけ、摘んで家に帰ってきた。それを牛乳瓶に挿したというのだ。牛乳瓶の、あの厚ぼったいガラス瓶の形がまず目に浮かんで来る。瓶の胴に牛乳メーカーの名らしきものが浮いているが、はっきりと読めない。おや、と思う。薄紫の野の花によって、野暮ったい牛乳瓶に花瓶としての存在感が生れてきたではないか。  「牛乳瓶」がとても利いている句である。野の花を、特に野菊を挿して似合うのは牛乳瓶を措いて他にない、とまで感じ入った。ところが、句を見直すうちに「手に入れし」が気になってきた。どこかで貰って来たのか。古道具屋で売っているとも思えない。そんな由来などを考えさせるのは、この句にはマイナスだと思う。  とりあえず別の語を・・・と考えるうちに「とりあえず牛乳瓶に~」が浮かんだが、イマイチか。ふと世界最短詩などとされる「陽へ病む」(大橋裸木)を思い出した。これに倣って「牛乳瓶に野菊」はどうか。伝統的な形式を守る句会に出すようなものではない。しかし俳句の本質を考えるための何かを含んだ句と言えるかも知れない。 (恂 19.11.10.)

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