立冬やカレー日和の神保町 野田 冷峰
立冬やカレー日和の神保町 野田 冷峰
『この一句』
合評会の席上「カレーは夏が似合うのじゃないかな」という感想が出た。なるほどそんな気もする。コマーシャルの影響だろうか、夏バテにはカレーが合いそうだ。ネット上にカレーの句を集めている奇特なブログがあったので興味本位で調べてみた。全部で六十句近くあるうち夏が四割を占める。ただし秋と冬を合わせれば五割以上になり夏をしのぐ勢いである。春が少ないのは意外だが、国民食カレーはどの季節にも詠まれているようだ。
句会の行われた日は恒例の「神田古本まつり」の最終日。作者は神保町の岩波ホールで映画を観たあと、近くのカレー店ボンディで食事をしたらしい。評判の店でなんと一時間半も待ったという。「こんなカラッと晴れた爽やかな日がカレーの一番美味しい日」だと断言する作者にとって、立冬の「カレー日和」はゆるぎない。
古本市、岩波ホール、カレー、そして最後は句会。なんとも趣味の良い、幸福な作者の一日を思い浮かべ、あらためてこの句に共感した。いつか真似してみよう。一時間半待つ自信はないけれど。
(可 19.11.07.)