いつの日か人も滅ぶや冬の月 高橋ヲブラダ
いつの日か人も滅ぶや冬の月 高橋ヲブラダ
『合評会から』(日経俳句会)
三代 恐竜が滅んだように人もいつかは、というスケールの大きい句です。
反平 この間満月を見た。この句で、あんな風になるのかなと思った。スケールの大きな句だ。
水牛 チバニアンに行き七十万年前の地層を見て色々感じたが、合わせて考えさせられ共感した。
十三妹 人類はもちろん、必ず地球は滅亡すると固く信じています。
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冬の月は澄んだ大気の中で刃のように輝き、青白い光を地表に投げかける。静かな夜に荒涼たる月を眺めていると、作者ならずとも宇宙の成り立ちや地球の行く末に意識が向かう。大気と水に恵まれ生命を育んできた地球は、傲慢な人間の営みによって汚され、人類は温暖化や核の脅威を止められず滅亡の淵に立っている。
作者は月が地球上の生物の盛衰を見詰めてきたことに思いを馳せ、「いつの日か人も滅ぶ」と詠じる。切れ字の「や」に深い諦念と、そうなってほしくない気持のせめぎ合いを感じる。冬の月が季語にとどまらない意味合い、大きさで迫ってくる。
(迷 19.11.29.)