灯台の真夜の呼吸や鳥渡る    今泉 而云

灯台の真夜の呼吸や鳥渡る    今泉 而云 『この一句』  なんと静謐な、また神神しさを湛えた句なのだろう。描写されているのは、深夜、灯台が明滅している空を鳥が渡って行く風景である。月は出ているのか、星月夜なのか定かではない。だが、真夜中の灯台の点滅を「呼吸」と捉えたことで、それが渡り鳥の羽の動き、星の瞬きや波の音などの大自然の営みに通じ、大らかな生命賛歌となった。  ところで、作者はどこにいるのだろうか。灯台を見下ろす山の上、灯台を見上げる海の上、あるいは灯台の下の公園など。場所によって見える光景は違ってくる。沖を行く船の上だとすれば、鴨や白鳥の群れが頭上を通り、光を投げ掛ける灯台の方へ…となる。絵に描けば、鳥が大きく、灯台は小さくというシュールな構図になるかもしれない。  さらに肝心の、渡り鳥。先程、鴨や白鳥と書いたが、他に鶴などもいる。渡り鳥は何だったのか。様々な想像をしていると、鶴がヒマラヤを越える映像が頭に浮かんだ。もうひとつの疑問、この灯台はどこなのか。知床、能登、壱岐…。光源は松明が赤色の電球になり、いまやLEDに。そう、日本では灯台守は姿を消したのだとか。 (光 19.10.23.)

続きを読む